I went to Bali 10 「オギちゃんとわたし」

 

 

夜になり。

わたしとK織は満を持してフルムーンパーティーにでかけた。

 

街灯の全くない真っ暗な薮の中を、海岸通に向かって突き進む。

満月の夜なのだが、都会派(笑)の私たちには電気の明かりのない薮の中では道すら見えず、頼りになるのはiPhoneのライト機能のみ。

 

その暗闇を歩いていると、真横を時折自転車が猛スピードですり抜けていく。

もちろんライトも何も点いていない、真っ暗な中を猛スードの自転車に乗って走り行く真っ黒い人。

彼らはあのスピードで、この暗闇で周りが見えているのだ。

「ほえ〜〜」

生き物のとしての己の性能の悪さにしばし落ち込む。

 

そんなことはさておいて。

”ふるむーんぱーてー”である。

 

夕方街でリサーチしてきたK織に寄ると、海岸通のレゲエPubが今夜のパーティー会場のようだ。

 

その店に向かう途中、盛り上がる時間帯を待つのに海沿いの一軒のレストランに入った。 海を見ながら食事ができるように席が作ってあり、テーブルの上のキャンドルがロマンティックにゆれている。

 

食事は少し前に別のお店ですませたので、お腹はいっぱいだ。

申しわけに頼んだフレンチフライをつまみながら、ビンタンラージをゆっくり飲んで時間をつぶす。夜風が心地いい。

 

試しに飲み物を運んできた地元のウエイターに、今夜のパーティーの様子を聞いてみたら「友達は行くと言っていた」とか「あると思う」とか意外や小さな島のお祭りにしてはあやふやな答えで、果たして今日のパーティーはちゃんと盛り上がるのかと心配になってきた。

 

この事に限らず、インドネシアの人々はあまり好奇心旺盛ではないというか、知識や事柄に対してのある意味の欲を感じない人が多い。

聞いた事に関しても、知らない事は知らないという姿勢だ。それ以上に調べたり、他に聞きにいったりという人にもあまりお目にかからない。

そもそも、自分のごく身近な事柄にしかもともと興味がなさそうだ。

国民性のちがいなのかもしれない。

 

などどK織と無駄話をしつつ、11時を過ぎて頃合いになったので、例のPubに向かった。歩いていく道すがら、ドンドンという4つ打ち系ドラムのビートが聴こえてくる。

いい感じだ。K織の瞳も期待に輝いている。

 

店に入っていくとある程度の人だかりと照明、音楽。そのフロアで思い思いに踊る少数の観光客(主に欧米人)と地元の島の住人。

 

「なんか違う」

 

K織の言葉に頷くわたし。

 

スペイスバーではないのだから仕方ないけど、この島に来る前に散々見て楽しみにしていた、砂浜にそのまま立ち上がるサイケデリックな色とカタチのDJブースと松明の中で水着で踊るオシャレな人達のヴジュアルイメージ。そのニオイがどこにもない。

 

店内は風が吹きさらしで、フローリングの床に上に何本かのむき出しの丸太が、柱として屋根を支えているという感じ。

「湘南辺りの海の家」という風情だ。

 

「音楽は悪くないんやけどな」

 

昨日のトラワンガン島の店のバンドサウンドに比べたら、コチラはダンスビートが爆音で夜の海に響き渡っている。ちゃんとDJらしき人もいる。確かに踊れる音だ。古くさくもない。

 

なんとなくザンネンな風景の中で声をかけてくる島のオニイチャン達(コチラの人は本当に臆面もなくナンパしてくる)をかわしながら、適当な場所を確保してしばらく様子を見ていた。

 

前にも書いたが、ワタシは好奇心のみで今回のこの島のパーティ巡りプランに乗っかった人なので、もともと「いつもクラブで朝まで踊ってますぅ」的なカルチャーが自分の中にはない。(←しかもそもそもディスコ世代)

砂浜で4つ打ちビートで朝まで踊る、、、というより、海を見ながらぼーっとお茶を飲んで夜は早く寝る、、、というような「君子危うきに近寄らズー亀仙人ツアー」くらいが体力的にはちょうど良いのかもな。

少し離れた所で頼んだアルコールのグラスを片手に、酔っぱらって踊る人たちを傍観。厭世観。なんだかみんなすごいなーと感心する。

 

早く切り上げて帰ろかな。。。的な思いで、フローリングの床から外の海岸にでて砂浜に座って適当に注文したカクテルを飲みながら夜の海を眺めていた。

思ったほど星は出てないのだが、それでも闇の中の漆黒の空の色は日本では見た事のないほど濃厚で、ひとつひとつの星の光の瞬きを際立たせていた。

 

ふと見るとK織も店内からでて、波打ち際で月に向かって裸足て踊っている。

 

これはこれで良い夜だな、、と、夜の海の風に吹かれながら、アルコールで少しぼんやりした頭を醒ます。

 

しばらくして暗闇の中でK織が「オギちゃん!!!」と叫んだ。

どうやら夕方ひとりで島探検に出かけた時に知り合った、島の男のコのようだ。岡村隆史に似てて、いい人やでーと話していた。

たしかに岡村がボブマーリーのコスプレをしてさらにお猿度が増したらこんな感じかな?と思う。

 

オギちゃんはニコニコしながら近寄ってきて、話しかけてくる。

K織が「友達」とワタシの事を紹介して、しばらく3人で話すが、オギちゃんの英語らしき言葉はよく判らない。

ふんふんと頷いて聞きながら、どうやら判った事は

 

オギちゃんはサーファーである。

オギちゃんはオッサンに見えるが24歳である。

2歳のときからサーフィンをやっており、スポンサーが2人いてサーフィンの仕事でバリ島にも行った。

サーフィンはトゥルルルルである、簡単だ。

コモドドラゴンを飼っていて、明日来たら見せてあげる。(どこに?)

コモドドラゴンは危険だ。

でも僕がいれば大丈夫、トゥルルルルだから。

大きな波が来たらトゥルルルルだ。

 

とにかくすべてにおいて最後はトゥルルルルと言いながら、あとはジェスチャーなので、それなら初めからジェスチャーだけでええじゃないかと思うのだが、トゥルルルルは言いたいらしい。

 

オギちゃんが教えてくれた、浜辺に打ち上げられるプランクトンを見たくて波打ち際の砂を目を凝らしてじっと見る。

キラキラ光る砂の粒のようなものらしくて、波が引いてゆく一瞬に確かに砂の中に光るものが見える。

月が出てない夜は浜辺全体が夜空の星のようにキラキラ光っているんだとか。ロマンティックな光景である。

 

そんなオギちゃんは浜辺の流木に座ろうとすると砂は払いのけてくれるし、飲み物は買って来ようか?なにがいい?とやたら親切だし、キラキラした瞳でジッと見つめてくるし、コモドドラゴンを見せたいので明日また来てほしいというし(どこへ?)

K織がにやにやしながら「オギちゃんに気に入られてるで」と肘でつんつんしてくるし、、、、

 

 

オギちゃん

 

若干24歳。

岡村隆史寄りのボブマーリー。

ペット:コモドドラゴン。

 

う〜〜〜ん。(– –;)

どうする、俺。

 

 

つづく。