I went to Bali 9 「ゴキちゃんとわたし」

 

 

 

 

さて。

 

、、、、、時は夕暮れ。

、、、、、やっと着いた宿。

、、、、、荷物の重たさ。

、、、、、宿のおばちゃんとK織のニコニコ顔。。。

 

 

大人としての冷静な判断をもって諦めの境地に至ったワタシは、今晩一晩はガマンする事にしてこのやまんばの部屋で荷物を解いた。

 

とは言えあまり部屋の中には居たくないので、外のテラスに腰を下ろし、煙草を燻らす。

 

目の前には木々が生い茂り、それを眺めながらゆっくりと煙草を吸う穏やかな夕暮れ。風に吹かれながら縁側でぼーっとする老猫の気分ってこんな感じかも。

 

うんうん。まあ悪くない。

と半ば強引に納得しながらしばし黄昏れる。

 

 

しかしその穏やかなひと時が、だんだんとテラスの外灯に集まってくる虫たちによって驚愕の夜へと変っていく。

足下に集まるヤブ蚊に辟易しているうちに、蛾や黄金虫のような大きめの虫たちもテラスを飛び交うようになった。

 

こうなるともう黄昏れている場合ではない。

荷物の中から虫除けを取り出し、空中に散布。

 

K織も応戦して、強力虫除けを小屋中にまき散らす。

 

ここで私たちは野生の島の野生の昆虫に、無菌大好き弱小日本国から持っていった強力虫除けなんか、ぜんぜん歯が立たない事を思い知るのだ。

 

光のない国に一点の明かりを見つけた虫たちは、ハンパない勢いで群がってきて目の前を飛び回る。

 そして、我々の必死の防虫駆除にもかかわらず、ついに小判大のゴキブリ様。。

 

降臨!!!

 

やまんば小屋に怯まなかった野生児のK織も、ゴキブリには弱いらしく気が狂ったように虫除けをゴキ様めがけて集中散布。

けれども当のゴキ様はまったく気にされていないご様子。

 

き、、、効かない。。。

 

私たちが頼りにしていた唯一の文明の武器も、この大自然の中ではオモチャの吹き矢くらいのショボイ飛び道具であった。

 

コウなったらしょうがない。集まってきている虫たちはテラス灯の光がお目当てなのだ。その明かりを消してしまえば、またどこかに行くだろう。。。

 

K織に電気のスィッチを消すように頼む。

 

 

と。。。その数秒後。

 

 

耳元をかすめる羽音。。。

 

 

そして。。

 

 

かつて経験したことのない感触。。。。

 

ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!!!!!

 

電気をつけるとワタシの首元にゴキ様が降臨していたのだっ

た!!!!!!!!!!!!!

 

 

言葉なく声も出ずひたすらバタツくワタシ。

叫んだのはそれを観ていたK織の方だった。

 

猫屋敷。。テラスに逃げれば虫屋敷。

 

 

一句

 

 

つづく

 

もののけ、そこのけ、わたしが通る